【接を含む熟語】特許公報で見かける当接・摺接・接続など

こんにちは、特許事務所で勤務している機械系弁理士キックです。

これまでに350件以上の特許出願書類を作成してきました。

特許公報では、当接・摺接・着接など「接を含む熟語」が使われていますよね。

そこで今回は、2021年に発行された特許・実用新案公報から「接を含む熟語」を抽出し、以下の３種に分類した結果をお伝えします。

使わない方がいい「接を含む熟語」

特許用語の可能性が高い

以下の「接を含む熟語」は、特許公報に特有の技術用語（特許用語）を多く収録している「特許技術用語集」には載っています。

ですが、広辞苑、大辞林などには掲載されていません。

このため、特許用語の可能性が高いといえます。

特許用語は、特許公報以外で滅多に使われることがない難解な用語です。

したがって、分りやすさの点から、以下の「接を含む熟語」は使わない方が良いでしょう。

接を含む熟語	特許技術用語集 第3版	1. 広辞苑 第7版 2. 大辞林 第4版 3. デジタル大辞泉（2022年2月時点） 4. 精選版 日本国語大辞典 5. JIS工業用語大辞典 第5版 6. マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版 7. 学術用語集 機械工学編（増訂版）
摺接	〇：掲載	×：不掲載
接片	〇：掲載	×：不掲載
弾接	〇：掲載	×：不掲載
着接	〇：掲載	×：不掲載
貼接	〇：掲載	×：不掲載
螺接	〇：掲載	×：不掲載

広辞苑などの国語辞典、JIS用語辞典、マグロ－ヒル大辞典

広辞苑などの上記１～４の国語辞典、上記5のJIS工業用語大辞典 、上記6のマグロ－ヒル科学技術用語大辞典は、知財裁判において、用語の解釈に利用されている代表的なものです。

学術用語集

上記の「接を含む熟語」が学術用語集に掲載されているか確認した理由は、特許法施行規則に「技術用語は学術用語を用いる」と定められているからです（特施規24条様式29備考7、同24条の4様式29の2備考8）。

意味

上記の「接を含む熟語」の意味は、特許技術用語集によれば、以下のとおりです。

摺接〔しゅうせつ〕 滑る状態で接すること。

接片〔せっぺん〕 接する切れ端。

弾接〔だんせつ〕 弾力的に接すること。

着接〔ちゃくせつ〕 接触した状態に着けること。

貼接〔ちょうせつ〕 貼り付けて接続すること。

螺接〔らせつ〕 ねじが噛み合って接していること。

出典：特許技術用語委員会（2006年）「特許技術用語集 第3版」 日刊工業新聞社

上記の熟語を使うと、発明を簡潔に表現できますが、上記の熟語を用いることはおすすめできません。

文章が長くなってしまっても、分かりやすさの点からは、上記の熟語の意味を使って文章を作るのが良いでしょう。

特許・実用新案公報における出現数

上記の「接を含む熟語」が、2021年に発行された特許・実用新案公報に、どの位記載されているか調べてみました。

接を含む熟語	使用されている公報数 （2021年）
摺接（しゅうせつ）	2,682
弾接（だんせつ）	182
着接（ちゃくせつ）	160
螺接（らせつ）	38
接片（せっぺん）	23
貼接（ちょうせつ）	2

調査データについては、後述します。

使ってはいけない「接を含む熟語」

出典がない

次に挙げる「接を含む熟語」は、特許用語を収録している特許技術用語集にも掲載されていませんので、特許用語の可能性が非常に高いといえます。

このような出典のない熟語の使用は控えるべきでしょう。

知財裁判（審決取消訴訟・侵害訴訟など）において、用語の解釈の際に提出する証拠がないと困りますよね。

接を含む熟語	1. 広辞苑 第7版 2. 大辞林 第4版 3. デジタル大辞泉（2022年2月時点） 4. 精選版 日本国語大辞典 5. JIS工業用語大辞典 第5版 6. マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版 7. 学術用語集 機械工学編（増訂版） 8. 特許技術用語集 第3版
接離	×：不掲載
断接	×：不掲載
接当	×：不掲載
対接	×：不掲載
押接	×：不掲載
衝接	×：不掲載
接断	×：不掲載
固接	×：不掲載
接置	×：不掲載
接床	×：不掲載
嵌接	×：不掲載
接口	×：不掲載
接設	×：不掲載
結接	×：不掲載
完接	×：不掲載
接紙	×：不掲載
接解	×：不掲載
常接	×：不掲載

特許・実用新案公報における出現数

2021年に発行された特許・実用新案公報において、特許用語の可能性が非常に高い「接を含む熟語」の出現数は以下のとおりです。

接を含む熟語	使用されている公報数 （2021年）
接離	1,004
断接	356
接当	132
対接	60
押接	46
衝接	38
接断	27
固接	19
接置	9
接床	8
嵌接	6
接口	5
接設	3
結接	3
完接	3
接紙	2
接解	2
常接	1

使用するのに問題がない「接を含む熟語」

辞典に載っている

以下の「接を含む熟語」は、国語辞典に掲載されていますので、使用するのに問題ありません。

国語辞典に掲載されている「接を含む熟語」はたくさんありますので、特許公報での使用頻度が高いものを15個挙げておきます。

当接（とうせつ） その部分に当たり、接していること。

接続（せつぞく） つなぐこと。つながること。

直接（ちょくせつ） 間に何も介在しないで、じかに接すること。

接触（せっしょく） 近づいて触れること。触れ合うこと。

隣接（りんせつ） となり合わせになっていること。

接着（せっちゃく） くっつけること。くっつくこと。

近接（きんせつ） 非常に近づくこと。接近。

接合（せつごう） 物と物とをつなぎ合わせること。

間接（かんせつ） 間に他の物を置いて事を行う、または、行われること。対象にじかに働きかけないで、他の物を仲立ちとして行うこと。

接近（せっきん） ちかよること。ちかづくこと。

溶接（ようせつ） 金属・ガラス・プラスチックなどの接合で、その部位を溶かして継ぎ合わせること。

接地（せっち） 地に接触すること。飛行機などが着陸すること。

密接（みっせつ） すき間もなく、ぴったりとくっついていること。

接線（せっせん） 曲線上の二点P・Qを通る直線を考え、点Qを点Pに限りなく近づけたとき、二点P・Qを通る直線が限りなく近づく直線を、その曲線の点Pにおける接線といい、点Pを接点という。

圧接（あっせつ） 溶接法の一。金属の接合部を摩擦や爆発によって加熱し、圧力を加えて接合すること。

出典：大辞林 第4版（2019年）三省堂

特許・実用新案公報における出現数

2021年に発行された特許・実用新案公報において、使用するのに問題ない「接を含む熟語」の出現数は以下のとおりです。

接を含む熟語	使用されている公報数 （2021年）
接続（せつぞく）	157,486
直接（ちょくせつ）	106,213
接触（せっしょく）	99,735
隣接（りんせつ）	64,753
接着（せっちゃく）	43,724
近接（きんせつ）	36,487
当接（とうせつ）	35,534
接合（せつごう）	33,865
間接（かんせつ）	25,065
接近（せっきん）	18,092
溶接（ようせつ）	15,430
接地（せっち）	13,112
密接（みっせつ）	7,222
接線（せっせん）	6,081
圧接（あっせつ）	4,401

調査データ

データベース

「接を含む熟語」が使用されている公報数は、CyberPatentDesk（サイバーパテント社の特許情報サービス）を用いて検索した結果です。

本文全文（特許請求の範囲／実用新案登録請求の範囲、明細書、要約書）に1回でも、上記の「接を含む熟語」が出現する公報を抽出しました。

ただし、他の語句の一部である場合にはカウントしていません。

たとえば、公報に「接合」が含まれていても、「直接合成」などと記載されている場合には、「接合」が使用されている公報の件数に含めていません。

調査対象の公報

調査対象の公報は、2021年に発行された公報のうち、次の3つです。

• 公開特許公報
• 公表特許公報
• 登録実用新案公報

登録公報、再公表特許は、調査対象の公報に含めていません。

調査対象に登録公報を含めていない理由

調査対象に登録公報を含めてしまうと、同一の出願について、公開・公表公報＋登録公報と二重にカウントすることになり、出現数の調査にあたって好ましくないと考えたからです。

調査対象に再公表特許を含めていない理由

再公表特許は、2022年1月から廃止されました。

このため、2021年のデータと、2022年以降のデータとを比較することを考慮し、調査対象から再公表特許をはずしました。

まとめ

今回は、特許公報で見かける「接を含む熟語」について解説しました。ポイントは、以下のとおりです。

参考資料

特許技術用語集 第3版（2006年）

広辞苑 第7版（2018年）

大辞林 第4版（2019年）

JIS工業用語大辞典 第5版（2001年）

マグローヒル科学技術用語大辞典 改訂第3版（2000年）

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